30代おじさんJICA海外協力隊でタイ生活

30代後半から海外転職を考え辿りついたJICA海外協力隊。海外ボランティアとしてのタイの2年間の記録。

タイの認知症高齢者介護問題 驚きの田舎事情!?

現在、私は公立病院のボランティアとして活動しているわけだが、週2回は地域に住む高齢者の家に訪問する機会がある。

去年から始めて延べ80件以上訪れている。

その中で、日本とは違うタイの高齢者介護の実情に直面することが度々あったので伝えたい。

寝床は店の中にある

家に訪問すると、そこは板金業を営む家だった。

その店を通り抜けた家の中に、寝たきりの高齢者が居るのかなぁと思っていたら、ふと、その奥でむくっと起き上がる高齢者が見えた。

店の中にベッドが置いてあってそこで生活していたのである。

最初は、この環境は高齢者の体にとって果たして良いものなのだろうか?と不思議に思った。

扉の無い外が丸見えの部屋は、朝晩の気温差や常に虫が飛び交う等、高齢者が生活する上での衛生面を考えたら良いとは思えなかった。

しかし、プラス面で考えると、家族が仕事をしながら常にその高齢者に気を配れる場所であること、店を訪れる客とその高齢者がコミュニケーションを図ることができるので刺激を与えられるのである。

家の奥で一人ポツンと一日中ベッドで過ごすよりも、店の中にベッドがあるのはある意味では合理的なのかもしれないとも感じた。

4畳半・窓なしで暮らす

認知症が進み寝たきりの状態。

同敷地内で暮らす弟が介護をしている。

タイの場合、家族が多く家族間の結びつきも強いのが特徴で、認知症が進んだ状態でも在宅で家族が介護をしながら生活しているのがほとんどである。

逆に言うと、日本のように高齢者の施設が無いので家族が介護するしかないともいえる。

実際、バンコクを中心とする都会ではそういった施設も増えてきているのだが、タイの高齢者対策には地域格差があり、私が住むこの地域にはそのような施設は無い。

この患者にとって気がかりだったのが、清潔面の問題。

生活している部屋からトイレやシャワーを浴びに行こうとすると、いったん外に出て50m以上歩かなければならない。

歩けないこの高齢者は、今、シャワーを浴びることはできない。体を拭くだけなのである。

もし、日本のようにデイサービス等があれば、シャワーを浴びることも可能かもしれない。

また、一日中狭い部屋にいるよりは、刺激を増やすことができて良いかもしれない。

しかし、この地域にそのような施設は無い。

無職で昼から飲酒の息子に介護される

家に訪問すると、母の食事を介助している息子。

よく見ると、無理やり口にスプーンを突っ込んでいるように見える。

後から確認するとその母親の口は切れていた。

それから尿管の交換のため看護師が準備を始めると、その息子は部屋を出て行った。

全く自分の母親のことには興味もない、むしろ面倒くさいように思える。

息子は看護師の問いかけにも無視、玄関口に座り、何かを吸っている(タバコではないやつ)。

看護師の処置の様子を見ていたが、その患者はオムツをしていないことに気が付いた。

値段が高いからオムツを購入できないという理由もあるだろうが、日本でいうところの不適切な介護と言わざるを得ない。

大きな床ずれもあり、確かに家族の負担はおおきい。

このような状況でも、タイの田舎の場合には入所できる施設等は無く、家族が介護を担い続けていかなければならない。

家族の側に立ってみれば、母親を介護をするために仕事もできない、収入を得られない、ストレスがたまる、いつもでこの生活が続くのだろうという不安が募るという事なのかもしれない。

この状況が改善されるためにボランティアとして自分が何をできるのだろうといろいろ思いを巡らせるが、今できるのは、一緒に訪問した同僚と、日本とタイの介護を取り巻く現状について話合う事しかできない。

いちボランティアとしてできる事に限りはあるが、その中でタイの現状を日本に伝える事、また日本の現状をタイに伝えることも重要な役目だと考えている。